踊るたぬきのサンバ・ノ・ぺ

踊らされて生きているたぬきのお話

麻疹は怖い

公衆衛生を齧った人間はすぐに世の中のトンデモ医学と戦いたくなるけど、最も我らが忌み嫌うのは反ワクチン派。

第二次世界大戦後、世界の(特に先進各国の)平均寿命が一気に伸びたのは5歳未満児死亡率(U5MR)が著しく下がったから。平均寿命の値はその計算方法上生涯の早い段階での死亡に大きく左右される。5歳未満の小さな子どもたちが死ななくなったことが平均寿命の延伸の大きな原因なのだ。それに寄与したのは栄養状態の改善、医療の改善もさることながら、何と言っても予防接種の普及による感染症での死亡の減少によるところが大きい。

BCGで結核が、天然痘ワクチンで天然痘が、麻疹ワクチンで麻疹が予防されたことでこれら感染症で命を落とす人が本当に減った。

 

麻疹というのはすごく感染力の強いウイルスで、麻疹に対する免疫のない集団に感染者が1人いた時、その1人から12-18人に感染すると言われている(これがインフルエンザの場合せいぜい1人)。そういう病気だから、感染の伝播を止めるためには、ワクチン接種によって、集団の95%以上が麻疹に対する免疫を持つ必要がある。でも、中には病気や体質でどうしてもワクチンを打てない人だっているわけで。赤ちゃんだって1歳までは接種できないけど、1歳未満だって麻疹には罹る。そういう人達を守るためにも打てる人はみんなワクチンを打ってほしい。今はコロナ禍でなかなか病院に行けず接種機会を逃した人達がいたために人流が戻り始めた今、いろいろな場所で麻疹が流行り始めている。麻疹はマジで今でも死ぬ病気です。マジで死ぬ。肺炎にも脳炎にもなる。他は打たなくてもせめて麻疹のワクチンは打って。

 

何十年と昔は、近所に麻疹に罹った子がいるとわざわざ同じ部屋で過ごして移してもらう、なんてことをしていたなんて話を聞くことが度々あるけれど。

 

でも麻疹は本当に怖い病気だ。そんなことは本当にやめてほしい。

今でも、日本でさえ、麻疹は1000人に1人は死ぬ病気なのだから。この日本で1000人に1人だよ?10万人に1人じゃないんだよ、1000人に1人。入院する確率もめちゃくちゃ高い(←ちゃんと調べろw)

 

そして麻疹が怖いのは、治ったと思った数年後にSSPE(亜急性硬化性全脳炎)に発展する可能性があること。1歳未満の乳児や、免疫抑制状態で麻疹に初感染した例で起こることが多いと言われている。これは麻疹のウイルスが中枢神経系に持続感染することで起こる病気(人間の身体の中で例外的に免疫系の猛攻を逃れられる場所が中枢神経系だったりする。だから追い込まれたウイルスが中枢神経系に感染するんだな…)。最初は賢く運動も活発だった子供が、癇癪を起こすようになったりぼーっとするようになったりして、どうしたのかと思っていると、知的障害や運動障害を呈し始め、発症から6-9ヶ月で死亡の転帰を辿るというとても予後の悪い病態。最後は会話もできなくて寝たきりになってしまう。子どもがこんな目に遭ったら、親は辛すぎない?

ちなみにこのSSPEは生ワクチン接種例では確認されていない。それだけでも麻疹のワクチンは打っとく理由にならない?

 

それから麻疹脳炎はとても怖い。麻疹によって脳炎を起こすことがあるけれど、こうなると3分の1は死亡、3分の1は後遺症を残し、後遺症なき生存は3分の1のみ。

 

私は人の不安につけ込んで脅して行動を変えようとするのは好きじゃないけど、マジで麻疹にはビビってほしい。マジでバイオテロレベルのウイルスだから。

 

でも、そんなふうに怖い麻疹でも、2回きちんと予防接種を受ければ予防できる。

 

コロナのレベルじゃなくマジでヤバい麻疹を予防するために、本当に打って、麻疹の予防接種。

 

そして私のいい加減な知識を語るよりも、国立感染症研究所が一般の人間向けにすごくわかりやすいFAQを公開しているので、ぜひ観てみてほしい。↓

https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles/221-infectious-diseases/disease-based/%20ma/measles/549-measles-qa.html#Q1-05