踊るたぬきのサンバ・ノ・ぺ

踊らされて生きているたぬきのお話

ひよこがほしい

これは以前のエントリーにちらっと書いた私が子どもの頃の武勇伝の一つ。

私は子どもの頃から動物が好きで、犬や猫や小鳥みたいなふわふわした生き物に目がなかった。

1歳になる前に歩いていて、歩けるようになったら落ち着きなくちょこまか動き、子どものくせに筋骨隆々としていた私は1歳半になるといたずらがひどくなり、小さな台風か竜巻のように、私の通った跡をトレースできるくらいいろんなものをめちゃくちゃにしていた。

そんな私が大人しいのは、夕飯の支度をしている間、母がテレビで子供番組を見せている時。

ある時、いつにも増して私が真剣にテレビを観ているので、母が怪訝に思って見てみるとそれはセサミストリートだったらしい。卵からにわとりの雛が孵り、やがて羽根が乾いてふわふわのひよこになる、という映像は母が見るとグロテスクで気持ち悪かったらしいのだが、子どもはわかってないからこそ興味を持って見るのかも?と思ったらしい。

果たして次の日に問題は起こった。

短い脚で家中をぺたぺたと歩き回る私は冷蔵庫の前にやってきた。飲み物や卵のトレイがある冷蔵室は今の冷蔵庫と違い、一番下の方にあって縦に開いていた古い冷蔵庫。そしてバッタン!と閉まる扉ではなく、引っ張り出すと中から飲み物が入ったカゴのような物が出てくる引き出しのような冷蔵室だった。下が飲み物のスペース、上が卵のトレイ。私はその、飲み物と卵の冷蔵室を引っ張って開けた。1歳が冷蔵庫の扉を開けるなんて相当力が必要なのでは?と思うけれどもそこは運動量が多く筋骨隆々とした赤ん坊だった私には造作もないこと、勢いよく扉を開けると、私は上の段の卵(もちろん生)に手を伸ばし、床に落として割る!そしてもう一つ、もう一つ…冷蔵庫の中にあった生卵を全部床に落として割ってしまったらしい。

私はひよこがほしくて、ひよこを探してやったのだけれども、冷蔵庫の中の卵からは割ってもひよこが出てこない(当然だ)。

しばらくの間私は母が目を離すと冷蔵庫の卵を全部取り出して割り、1パックあれば1パック全てをダメにしていたらしい。

母が買ってくる冷蔵庫の中の卵には絶対にひよこはいないといつからか気がついた私はそのいたずらをやめたけれど、床は汚れるわ、卵は全部ダメになるわで母はしばらく困り果てていたそうで。

でも1歳半ってすでに、冷蔵庫の卵とテレビで見た卵が同じものと認識し、テレビで見たように、卵の中にひよこがいるのではないかと予想し、割って確かめる、という検証のプロセスを辿ることができるのがちょっと驚き。人間の1年半の成長ってすごいね…。

 

でもきっとおバカな私は、ひよこは見つからなかったけど途中から、卵を床に落として割る、という傍迷惑ないたずらの楽しさに味を占めていたんじゃないかな、と思う。

 

赤ん坊の頃の私にはそんな衝撃エピソードが山ほどある。