踊るたぬきのサンバ・ノ・ぺ

踊らされて生きているたぬきのお話

できるところを見せろ

このブログでは、私が年明けに出るショーの詳細は書かないことにしている。若手が本当に真面目に質の高いショーを作ろうとしているのに、田舎の山奥から出てきた中年たぬきが人間のお嬢様に化けて東京であくせく働いて趣味で踊ってます、なんていうあまりにもバカバカしくて痛々しいブログにそんな素晴らしいショーのことを書いて、ショーの価値を下げたくない。

そして日曜もそのショーに向けた全体練習だった。ボイ・ブンバはもう振付が覚えられないというよりどういう動きなのか全くわからん動きばっかり。これは自主練で更なる研究→理解したら振り入れという丁寧な作業が必要。なんかもう一人で大恥かいた。

そしてフレーヴォは前奏から振りに入る場所の音を聞き流してしまい、そうなるとめちゃくちゃ早いので途中からは全然入れない。前半しばらく壊滅状態。振りの流れは完璧に覚えてきた自信があるだけにすごく悔しかった。

まぁ、そこそこ練習したし稽古ももう終わっているコミッサォンだけが自分の想定していたのと同じくらいの完成度でそこそこ満足した(まだ全然ブラッシュアップしないといけないところはありすぎる)。

 

そしてしばらく前に書いた、降りた演目Samba coreografia。これは某リオの古参エリートサンバチームのコミッサォンの振付師の先生が、クラシカルだがとても渋く今でもショーに使われるサンバの名曲につけた高速で動きの多い振付。それを今回のショーに向けて私達日本の若手(若手に自分を含めるな、図々しい)にブラジルからオンラインで稽古してくれたという、今回のショーで1番の目玉の演目。そういう価値ある演目であり貴重な稽古なので、このショーにエントリーした全員が稽古だけは無条件に受けていいことになっていた。でも、この演目でショー本番に出演するにはオーディションがあり、私は早々にあきらめて降板した。降りたことに後悔はないけれど、ちゃんとオーディションを受けて潔く落ちるべきだったのかは今でも結論が出ない。でも私は後から少しずつ振付や身体の使い方が馴染んでくるタイプなので、たった2回目の稽古の翌日の全体練習でやったオーディションには受かるはずがないのはわかりきっていた。ただ、普段のさあや先生のサンバレッスンで一緒の高校1年生のポルタ・バンデイラ(サンバチームの旗持ちの女性、ビキニや羽根はつけないけれど、非常に名誉なポジション。回転しながら大きなチームの旗を見せる動きが多いので、元々バレエをやってる人がよくやる、という私の勝手なイメージ)のかわいいかわいいシノと稽古にだけは最後まで出続けた。最初から出演しないで稽古だけ受けていた人、私のように降板した人、オーディションに落ちた人で稽古に皆勤賞だった人は私とシノ以外にいなくて(そういう人を軽蔑する意図などない。お仕事の都合や体調とかもあるだろうし、出演しないのにモチベーションを保つのだって大変だ。私だってオーディションを受けて落ちてたら、つらくて稽古に出続けられなかったかもしれない)、最後の稽古の日、始まる前は、出演しない者同士、シノと2人で並んで座っていた。そこで、講師たちに、「今ブラジルでサンバ修行中で今日の稽古にはオンラインで参加しているダンサー2人の立ち位置に代役で入って」と言われる。

 

…マジか、まだちゃんと振り入ってないのバレるじゃん…。

 

まぁ、それでも貴重な機会をいただいたので、がんばって踊った。

その最後の稽古の翌日の全体練習が日曜だったというわけ。

 

なので、日曜の全体練習の時も、Samba coreografia のリハの時は私達がブラジル組の立ち位置に代役として入った。

 

ショーの全体練習にはそれぞれの演目の稽古をしてくれる先生も全員ではないけど見えていて、その中に、私のサンバ・ノ・ぺ(ソロのサンバ)とサンバ・ジ・ガフィエイラ(サンバのペアダンス。社交ダンスのサンバは実は全然サンバではない)の先生であるJorgeさんがいた。Jorgeさんはこの演目を稽古してくれたリオの振付師のお友達だし、その振付師に一目置かれている。私は日本の男性サンバダンサー(ソロ+サンバ・ジ・ガフィエイラ)の中で勝手に一番上手い人、と思って尊敬している。Jorgeさんのレッスンは、それはそれは難しくて、何年通ったかわからないけど(それでもまだ3年てところか)、金曜の夜、疲れている時には「今日は休みます」とつい言ってしまう、なかなかハードなレッスン。と言っても激早なサンバをガツガツ踊らされて体力がキツい、とかそういう話じゃない。ノ・ペの踏み方1つからできていないところ明確に言い当てられてしまって、そもそも歩き出す最初の一歩の運びから直されるし、レッスンの中でやる振付もトリッキーで、着いて行こうと必死になると、脳みそが間に合わなくてオーバーヒートしそうになる。この演目の振付師と仲がいいというのもある意味納得の、怪物みたいなベテランサンバダンサーだ。

でも本当はお茶目で優しいおじさんなんだけど、時々ちょっぴり意地悪で、強面で決してにこやかに振る舞わないからみんなに誤解されてる気がするんだよなぁ…。

ただ、本当に見る目は的確で厳しい。

 

そして、Samba coreografia のリハが始まり…うっわー、私が代役してる立ち位置からもろ見えるとこにJorgeさんおるやん…。

 

そうは言っても曲が始まったら必死で踊るしかない。冒頭でいくつか間違い、最後の方は細かい振付をいくつかすっ飛ばし…。

 

…まぁ、怪我なく無事に終わったからいっか。

…まぁ、ほら、私の中では、コミッサォンは想定通りにできてたし…。

 

フレーヴォとボイの失敗も、Samba coreografia もきっちり踊れなかったのも、いろんな先生に全部見られちゃった…いろんな先生の顔に泥を塗ってしまった…と意気消沈して、疲れ切り、私は家に帰りました。

 

でも日曜の深夜(日付的にはすでに月曜)にJorgeさんから全然関係ない内容できてたメッセンジャー、ついでのように「そういえば、◯◯(Samba coreografiaの演目)、動けてたじゃない?」と。

 

え?私たくさん間違えたし、飛ばした振りもたくさんあったし、何よりみんなについていけなくて降板したのに…。

 

滅多に誉めてくれることなんてないJorgeさん。動けていたって書かれていただけで、踊れていたとも、よくやったとももちろん書いていないけど(当たり前だ!)…。もしかして私はもっとできないと思われていて、その想定よりは動けていたってだけのことかもしれない。他の演目で上手くやれなくて落ち込み気味なのがバレたから励ましてくれただけかもしれない。

それでも、それでも、心にまたほんのりモチベーションの火が灯った気がしました。

 

そして、後からたまたま見た日曜日の牡羊座♈️の占い…

 

「できるところを見せろ」

 

何もできなかった、って落ち込んだけど、見せるべきところは見せられたのかもしれない、と思ったのでした。